【新】『東大阪むかしむかし』
かわちのおばけばなし(後編)

むかしのこっちゃ、恩智川の水が澄んで、飲んだり洗いもんしとったころのこっちゃ。
南から流れてきた恩智川が西に曲がって寝屋川と合流するやろ、そのへんは両岸竹藪ばっかしで、その周りは田んぼばっかしやったんや。
そこに八幡さんがあって、その裏手に洗濯場があったんや。
ある日のこっちゃ、夕方、むらのかみさんがひとり機嫌よう鼻歌唄いながら、そこで洗いもんしとったんや。
すると、どっからか「サラサラッ、サラサラッ」、という音が聞こえて来るやないか、
「あれ?何の音やろ」あたりを見回してもだ~れもおらん、なんも変わったことなぞない、へんやなァと思いながらもその日は家に去んだ。
ところが、あくる日も、そのまたあくる日も同じような音が聞こえてきた、気色わるなったかみさんは、近所の連中にこのこと話したんや、
すると・・・・「あんたも聞いたんか?わても聞いたわァ」「わても、聞いたでェ」
むらの男たちはバカにして相手にせんかったんやが、「ほなら、あんたら一ぺん行ってみィ!」と言われて、さっそく次の夕方に行ってみた。
ほたら、やっぱり、「サラサラッ、サラサラッ」と音がするやないか。
あたりをなんぼ探しても、どこで鳴ってるのやら、なんで鳴ってるのやら皆目わからん。
この音、なんや小豆を洗うような音やったから、「これは小豆洗いちゅうお化けの仕業やで」となったんャ。
それからちゅうもん、みんな気色わるがって、夕方すぎたら川へより付かんようになったんや。
こどもたちも夜遅そまであそんどったら、「小豆洗いにさらわれるでェ」と、よう叱られたもんやったんや。
むかし横小路村の八兵衛という者が、亡くなった嫁の遺骨を京都の本願寺へ納めるため、大坂へ出て八軒家から伏見へ上る乗合船の客となりました。
枚方へ着くと、たくさんの乗客が乗りこんで参ります、その中の一人の女が亡き嫁にそっくりではありませんか!
八兵衛は特別な何かを感じ、気安くその女に話かけると、女は亡き夫の遺骨を京都の本願寺へ納めるため大和からやって来たのだと語ってくれました。
片方は妻を亡くし、片方は夫を亡くした二人は、同じ境遇で惹かれあい、固い夫婦約束を誓うまでになりました。
その契りの印として八兵衛は豊浦村で求めたかんざしを荷物から出して女に与え、二人はいっしょに本願寺へ参詣し、納骨をすませ西へ東へと別れたのです。
そして一年後・・・八兵衛は工合が悪く床についていたため、母親が前庭で手仕事をしていました。
すると、表の道を日傘をさした見知らぬ女が通りかかり、スーッと八兵衛の家の中へ入ったのです。
家の中で八兵衛とこの女がヒソヒソ話をしている声が母親に聞こえてきたと思うと、突然八兵衛がうめきだしたので、ビックリして家の中へ飛びこんでみると、女の姿は見えず、ただ八兵衛が床の中でうつろな目を天井に向けて寝ているだけでありました。
枕許には、かの例のかんざしと置手紙が一通。
昨年夫婦約束をした、かの女が、ふたたび会いまみえる間もなく病にかかり、夫婦になれなかったお詫びにと幽霊となって八兵衛にかんざしを返しにきたものでありました。
〇
明るくなった夜からは、闇の世界は消え、昼の世界のつづきとなりました。
でもそれは表に見える印象だけで、あやかしの宇宙はひとのこころ、
今なお、そこに暮らす人間の心の中に巣くっているのやもしれません。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

かわちのおばけばなし
かわちのおばけばなし(後編)

かわちのおばけばなし
かわちのおばけばなし 前編

生駒の山に龍がいた
生駒の山に龍がいた (後編)