8月某日、職業相談窓口でAさんが伏し目がちに語り出しました。

郊外の工場で駅からは15分ほど歩くんですが他の労働条件はすごく良かったんです。築2年で工場は新しいし、採用されたら車で通勤するつもりでしたし。
面接は午後6時からでした。こちらから今日でも行けますって言って、面接時間をハローワークで紹介状をもらった3時間後にしてもらったんです。

綺麗な三本の白い鉄砲百合が供えられた古い祠のあるＹ字の辻で左の道に入ったんです。求人票の地図では三叉路を左に行くように見えたので。そのまま進みました。
気がつくと辺りが薄暗くなっているんです。この時期普通はまだ明るいはずなのに。その時はおかしいと思いませんでした。6時がせまりあせってましたから。

またＹ字の辻に出たんです。さっきと同じ古い祠があったんです。鳥肌が立ちました。供えられた白い鉄砲百合が二本に減っていたんです。急に視られている感覚がねっとりまとわりつきました。

走りました。左右どちらに入ったかは覚えていません。そこで既に午後6時を過ぎていることに気づきました。慌てて面接先に電話を入れ、スマホをしまい顔を上げたんです。

白い鉄砲百合が一本供えられた古い祠が正面にありました。

その後どうやって工場にたどり着いたかは覚えていません。面接は午後７時過ぎに開始されましたが上の空でした。

だって、工場長さんに遅れた理由を話したらこう言われたんです。
「この工場建てた時に駅からこっちは区画整理されて、古い祠なんてもうないよ。」って。


そのまま震えてるAさんに私は言いました。
「面接場所への行き方は事前に必ず確認して下さい。面接は時間厳守。ハローワーク布施の職業相談窓口でスタッフに聞くか、ハローワーク内で自由に使える地図検索用パソコンなら印刷もできますから、もう迷うことはないですよ。」

ご注意願います！