8月某日
今日は朝から蝉の鳴き声が異常にうるさい。まるで何かを知らせようとしているかのようだ。
Cさんが来られたのはそんな騒がしい日だった。
Ｃさんはマザーズコーナーに来られるや否や、泣き出しそうな表情で立ち尽くす。

「私はどうやら鬼らしいのです。」

蝉の鳴き声がピタリと止んだ。
静寂の中、Cさんは勧められるまま着席し、スタッフに消え入るような声で話し出した。

「今月に入ってから面接のたびに、面接担当者が眉間にシワを寄せ、鬼を見るような表情をされるのです。」

「面接時の私には、鬼が憑いているのです。いいえ、きっと私自身が鬼なのです。」

徐々に鬼気迫る表情となるCさんに、履歴書から顔を上げたスタッフが優しく微笑んた。
Cさんが息を飲んだその刹那、スタッフがＣさんの中の鬼を一刀両断に切り捨てた。

「盛り過ぎです。」

一瞬の間を置いて、Cさんが堰を切ったように早口で話し出しました。

「写真が暗かったので明度と彩度を少し上げました。それから、髪の色を少し明るくして、泣きぼくろを消しました。それから、目を少し拡大して、眉毛を細くして、鼻筋に影を付け、輪郭を細くしました。それから、チークを追加し、瞳にグラデーションをつけました。それから、それから・・・」

スタッフは嬉々として、いや鬼々として話し出したCさんの言葉に言葉を重ねた。

「最近は写真スタジオでも履歴書用写真に修正を加えるところもあるようですが、これでは別人です。修正は明度等、必要最低限にとどめてください。それより、履歴書や職務経歴書の中身がより良くなるように検討してみましょう。そちらの方が大事です。」

★ハロワ怪談2018★

この話はフィクションですが、履歴書の写真を修正される方は少なくありません。明るさ（明度）を上げ印象を良くすることと、形を変えることは違います。面接時には写真と本人を同時に見られることを忘れず、書類の中身の充実をハローワークで図り、早期再就職を目指しましょう。